刀剣乱舞にハマり、刀に興味を持ったものの、写しやレプリカ、復元などの違いがよく分からず、言葉の定義が自分でも分かり辛いなと感じたため、まとめてみました。
同じような疑問を持つ方の参考になればと思います。
そもそも日本刀や鍛冶業界は文部省検定されていない(用語が統一されていない)ため、人によって用語の使い方が違うのだそうです。
刀鍛冶の資格試験なんて無いですもんね。(鍛冶技術を学ぶには現代でも弟子入り(就職ではない)が必要)
写しやレプリカなどは、刀工によるオリジナルの刀剣である「本歌」(本科)ありきの複製された存在ではありますが、その存在の有り方や存在理由が違っているため呼び分けられています。
写しとは
写しとは本歌の姿形を写し取り、玉鋼を使って作られた日本刀のことです。
写しは本歌の身代わりであったり刀工の腕を磨くことを目的として作られるのだそうです。
例えば素晴らしい名刀があったとして、実戦で使っていれば磨り減り折れてしまう可能性もあるため実戦で使うため同等の出来の名刀を求めるのは分かる気がします。
または神社などに奉納された名刀やあの有名な刀を自分も欲しい!もしくは作ってみたい!という気持ちもめっちゃ分かります。
そして刀工の腕を磨くことも目的の一つというだけあり、本歌へのリスペクトがありながらも写した刀工の作風が表れているのも特徴の一つだと思います。
例を挙げると、長船派の刀工である長義によって打たれた本歌:山姥切長義、それを刀工の堀川国広によって写して作られたのが山姥切国広ですが、「山姥切国広」は堀川国広の第一の傑作と呼ばれるほどの出来でした。
山姥切長義とそっくりそのままの出来であれば、堀川国広の傑作とは呼ばれないでしょう。
また奈良時代の生まれで平安時代初期の武将である坂上田村麻呂が所持していたとされる伝説の剣:楚葉矢の剣を、刀工の三池典太光世によって写して作られたものが徳川家康が所蔵したソハヤノツルキだといわれています。
しかしながら楚葉矢の剣は直刀、平安時代末期から室町時代にかけての刀工である三池典太光世によって写されたソハヤノツルキは湾曲した現在の日本刀と同じ形となっています。
こういったことから、写しとは本歌そのままの同じものではないことが分かりますね。
贋作とは
贋作とは基本的に悪意を持って作られた複製品です。
本歌・本物でないものをソレだと偽って本物とそっくりの銘を切るなどして粗悪品を売ろうとする行為なので非推奨です。
刀剣乱舞で贋作とされる「長曽祢虎徹」ですが、これは元は源清磨という名工によって打たれた刀を「虎徹」の方が有名だから「長曽祢虎徹」と偽って売られてしまったという全方位が迷惑を被った案件ですね…。
「長曽祢虎徹」は贋作であったが名刀であるため新選組局長の近藤勇の愛刀となった、という逸話が長曽祢さんを形作っているため一概には否定できないのが辛いとこです。
レプリカとは
レプリカの刀は日本刀に分類されず、材料は玉鋼ではなく亜鉛合金やアルミニウムなどで作られていて物は切れない形だけ同じ複製品の事です。
映画やドラマ、催事などで使用されたり本歌そのものの資料ともなるためそっくりそのままの形で作られたものになります。
本物そっくりの斬れない刀のお土産品や模造刀などもレプリカに当たりますね。
茨城県の結城蔵美館にある御手杵のレプリカも本物は戦時中に焼失してしまったため、かつての姿を残すために作られたものになります。
復元・再現刀とは
復元刀・再現刀とは神社や役所などで使用されることが多い用語のようです。
『失われた幻の刀剣○○の復元プロジェクト!』みたいなやつですね。
刀が既に失われていたり、焼け身になっていたり、または書類や資料はあるものの行方が分からない刀などをそれらの資料や押し型などを基にかつての刀の姿を復元・再現しようとしたものになります。
『本歌を基に別の刀工が作った刀』であるため、分類としては写しに該当するのだと考えられます。
しかしながら「写し」は「本歌の写し」という別の存在であるのに対して、「再現・復元」は「本歌」と同じものを求めて作られたという一点が最大の違いだと思います。
再現とはいっても製鉄技術が違うため昔と同じ材質の玉鋼にはなりませんし、作刀技術も違うため完全な再現・復元ではないのかもしれません。
しかしながらかつての刀を復元・再現しようと努力し限りなく近づけたものであると思います。
現在でも刀剣の復元プロジェクトはクラウドファンディングとしても多く取り上げられています。
今では失われてしまった刀剣のかつての姿を見ることが出来るかもしれない、というのは審神者にとってもとても魅力的なことです。
自分が記憶している中では2015年に行われた『蛍丸の復元プロジェクト』が刀剣乱舞が始まった年にちょうどあったためか、4500万円以上の支援金が集まったりなどしました。
蛍丸の伝説は傷ついた刀身に蛍が集まり綺麗に直ったというものなので、寄付した=蛍になったよ。という単語がSNS上で飛び交いましたね。(実は自分も蛍になりました)
また、石切神社では石切丸の本歌と共に改元の奉納事業として作刀された写しが2023年に公開展示されました。
石切神社では定期的に石切丸の展示があるため今後も見れる可能性はあります。
元の磨り上げ前の刀を復元したものなので復元・再現刀に当たるのかもしれませんね。
しかし同じくらい、本歌への敬意を持って今現在の姿をそのまま写すのではなく、かつての姿を思い描きながら作刀されてる訳ですから写しと呼ばれることにも矛盾はないと思うのです。
まとめ
刀剣乱舞に触れてから様々なイベントや刀剣に関するプロジェクトなど見てきましたが、気になっていた刀の写し、贋作、レプリカ、復元刀や再現刀の違いについてまとめてみました。
簡単に書いてしまうと、例えば名画を勉強のためオリジナリティを交えつつ模写したものが写し、模写した絵画に偽のサインを入れて本物として売ったものが贋作、コピーしたものがレプリカ、失われた名画を資料を基に再現したものが復元という感じでしょうかね。
気になっていたことや疑問点の解決にこの記事が役立てていたら幸いです。
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